宮崎ロッド・Prime Time

宮崎ロッド・Prime Time バンブーの贈り物を大切にしたい

my rod

聞き手/村上 寛
Tokyo New Jazz Festival主宰
国立NO TRUNKS店主

—まず、出身地と年齢を。

東京、昭島です。1957年生まれの43歳です。

—1年に何本ぐらい製作しているか教えて下さい。

25本位です。

—バンブーロッドの製作を始めてから何年になりますか?開業は?

1990年からです。11年目ですね。開業したのは1993年4月に会社を辞めてすぐですから、今年で…えーと8年目です。

—会社を辞めてこれでやっていこうという時、なんていうか動機みたいなものがあったと思うけど教えて下さい。

とにかく「やってみたかった」ということですけれど、やはりバンブーロッド作りの楽しさ、おもしろさがあったわけです、自分の中では。それと回りを取り巻く状況的にもいろいろありまして、仕事との両立は出来ないなと。好きなことを思いっきりやっていいんじゃないかと。正直に言えば、いまだにはっきりした動機はこうですと言えるまでには整理出来ていないようです。

—俺は会社勤めしながらやればいいと思っていたし、今でもあの時、引き留めておいた方が良かったと思うけど。

……。

—まあ、過ぎたことはしょうがない(笑)宮崎君の「釣り遍歴」を教えて下さい。

1977年、 初めてフライロッドを買いました。その前に ルアーをちょっとやっていたのですが、先輩がフライを始めて、それを見て変わっててカッコいい釣りだなと。それ以降はフライ一筋です。

—海釣りとかはやらないの?

今のところはやっていないです。海よりは山のほうが好きなので。

—よくキャンプで釣りに行くみたいだけど、この前も一人で2週間だったっけ、車がないのによく行くよな(笑)。

ははは(笑)新しいロッドのテストも兼ねてはいるんですけれども。そうですね、これがやりたかったというのもこの仕事を始めた理由になるのかな。会社にいた頃は、やりくりして、かなりひんしゅくもかいながら連休取っていたんですが徐々に責任ある立場になってきて…。昼休みに喫茶店で FFJ読みながらふぅーってため息ついたり(笑)その時は今よりも釣りに夢中っだったと思いますね。釣りに行くときは、なんか逃亡するって感じがあった。けれども最高の時間。

my alto sax

—それで"Prime Time"?

そうです。半分は。

—とすると、あとの半分は オーネット・コールマンの…

そうです。 Ornette Colman & Prime Time 。彼が音楽するように僕はバンブーロッドを作りたいなと思うのです。

—それってどういうことなのかな?

信念を持ってすれば、たとえ時間かかろうとも成せば成るっていうか。もちろん好きな音楽家はたくさんいますが皆スタイルは違っても「魂」というか「ソウル」というか、「志」みたいなものを持っていて、それが音楽の中にあると僕は思っています。そんな形のないものに血を通わせると、やっぱり彼のアルト・サックスの音が聞こえてくる。僕はモノ作りだけれど、楽しいことでも続けることには辛いこともありますよね。そんな時はどうしようと自由なわけです。でも彼はやめない。

—つまり彼のストロングなところが宮崎君の憧れであるわけだね。

そうですね。70歳近い今でも全然若々しい、カッコいいです。

—精神的な部分でと。すると実際のロッド作りで影響を受けた人は誰ですか?「師匠」にあたる人はいるのですか?

直接教えを受けた人はいません。竿作りは独学です。 カーマイケルの「ギャリソン」の本が当時は唯一の僕のテキストでした。ただ、刃物関係は近所に大工の棟梁、金属加工は旋盤加工をやっていた焼き鳥店のマスターに時々分からないところを教えてもらったりしています。

—手本としてはギャリソンのロッドというかメソードですね。

はい。影響を受けていると思います。

—”Prime Time”とギャリソン・ロッドの共通点はありますか。

ハンドカットであること、ハンドメイドであることです。外見的な共通点はほとんどありませんが構造力学を用いたテーパー設計であることです。ただし僕のロッドは僕なりの「味付け」をしてあります。

—宮崎君はギャリソンをどのように評価していますか。

ギャリソンは1975年に亡くなったのですが、アメリカの手工芸的な技術や技量が、69年のアポロ計画が象徴的ですがおそらく頂点を迎えた時代だったと思います。シンプルでありながら、工学的なセンスと手工芸が見事に融合している。また、ロッドの変化で言うと、長く重たい扱いにくいものから短くパワフルなものになって行くわけです。以前に彼の7フィートや7フィート6インチのロッドを手にする機会があったのですが、とてもスムースで投げやすかったなと。彼のアクションは、今でも通用するものを持っていると思います。

—なるほど。宮崎君が言っている「味付け」とはどういうことですか?

釣りの対象があちらとこちらではちょっと違うはずですよね。岩魚や山女を釣るのに相応しいロッドはどのようなものがいいのかな、と考えるわけです。それは、まず自分の釣りから始まっているのですが試作して使ってみて、ここをこうしようというふうに仕上げて行くわけです。また、特定の状況でよく働くロッド、たとえば魚は見えているけれども釣れない、フライを小さくして行く、ティペットは細くして行く、掛かったけれども取り込めない、とするとロッドで何とかしたいと考えるわけです。

—製作者の釣りのスタイルが反映されている部分が「味付け」として出てくるということですね。

そうですね。そういうこともあってモデルごとに名前を付けています。”Twiggy”「ツイギィー、小枝」とか”Mountain Solitaire”「山の一人遊び」とか。

—あと、ジャズの曲名なんかもあるね。”Spirits Rejoice”。

アルバート・アイラー(笑)

—(笑)エー、ロッド作りの行程を簡単に説明してくれますか。

丸のバンブーを裂いて節を伸ばして削って行く。荒削りの後、熱を入れる。次は仕上げの削り。ほとんどが削り屑になります。そして接着をして乾いたら表面の接着剤を取ります。曲がりを直してフェルールを付けて、 ブランクが完成します。それにグリップ、リールシートを付けてガイドを付けます。それから塗装をします。

workshop

—特に大変なのはどういった作業ですか?

僕の場合はブランク製作と塗装でしょうか。作業時間の比率で言ったら8割方はあると思います。

—時給で換算したらどのくらいかな。

考えたくない(笑)まぁ、僕の仕事が遅いだけのことです。

—製作者として大切にしていることを教えて下さい。

素材がバンブーであるということ。これに尽きるのではないかと思います。例えば7フィート/2ピース/2ティップのロッドには「節」の部分が最低27個所はあります。それを荒削りの前に火を入れて真っ直ぐに修正するわけです。時間と根気が必要な、まさしく「ロッドメーカーへの贈り物」だと思います。今の世の中に求められているのは、レスポンスと言うのか、いかに素早く出来るかという処理能力であって、仕事の面白みというか満足感や達成感が得にくくなっているのではないかと思います。僕がロッドを作っていて思うのは、バンブーで個人の可能性や「全体性」みたいなものが形になればいいなと。なんか脱線しちゃいましたが。

—現在注目している製作者はいますか。

やはり同業者はすべて気になります。それぞれ工夫しているしアクションも違う。また、アマチュアの方の作品も、 「つるや」さんのハンドクラフト展でコンテストがあるのですが必ずいいなと思うロッドがあります。

—今後の目標があれば教えて下さい。

よりロッド・アクションを洗練したいです。

2000-08-11

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