宮崎ロッド・Prime Time

ロッド製作になくてはならない道具をご紹介いたします。特別なものはありませんが手に馴染み、信頼に足る道具たちは私のロッド製作を大いに助けてくれるパートナーです。

hake

私の刷毛

刷毛」を漢和辞典で引くと、刷(サツ)は「取り除くこと、清めること。する。こする。」という字義を持っていることが分かります。「毛でもって(塗料を)刷する」道具が刷毛で、筆は「竹の先に毛を付けて字を書くもの」ですから「筆塗り」ではなく「刷毛塗り」となるわけです。Prime Timeロッドの塗装は、ウレタン塗料を刷毛を使って重ね塗りで仕上げています。私が使っているのは「すじかい刷毛3号」です。

刷毛1

良い刷毛は塗装作業にとって不可欠な道具です。塗料の特徴、性能にあったその選択は仕上がりにかなり影響を与えると私は考えています。どのような刷毛が良いか、選択に当たってのポイントを自分なりにまとめてみると…

(1)適度な毛先の長さ、量であること
(2)適度な毛先のしなやかさと固さ
(3)毛先のまとまりの良さ
(4)きれいに毛先が揃っている
(5)塗料の含みが良くて毛が抜けにくい、等々となるでしょうか。

私が使っている塗料は硬く光沢のある被膜を形成することが出来ますが、季節によってその薄め方を変えながら「のび具合」を調節して使う必要があるようです。一次的な硬化時間が早いので塗り返しはほぼ出来ませんし、一度に厚塗りすると塗布面の角に塗料が寄ってしまい平面が得られません。

したがって適度に薄めた塗料を丁寧に、かつスピーディーにロッドの6角面で均一な厚さが得られるように「1回」で塗らなければなりません。今のところ私が気に入っている刷毛は「約30mmの長さの毛先で細くて柔らかく、しなやかな毛質」を持つものです。6本一組で続き番号を付けて1回1日、1本の刷毛で塗装しています。小さな埃や気泡に気を付けながら塗布・硬化の後、塗装面を1000番程度の耐水ペーパーで整えてと6〜8回ぐらい作業をくり返して行くのですが良い刷毛と悪い刷毛では一目瞭然、結果に現れてきます。

刷毛2

塗装は最も気を使う作業ですが塗料の性質と刷毛の見極めが決まればとても楽しいものになります。上手に塗布できれば、あとは塗料が所期の性能を発揮して良い塗装面になってくれます。言い方を変えれば「塗料任せ」の一歩手前の「刷毛仕事」の奥行きはかなり深いな、というのが私の実感です。使用後は塗料専用の薄め液で毛先を2回ほど洗って塗料を流し去り、良く乾燥させてから石鹸を付けて水洗い・すすぎをしています。何回か使ったものの方が使いやすくなるようです。

kanna

私のカンナ

鉋ではなくカンナ。私が使っているカンナはイギリス生まれのアメリカ育ちで「押して使う」、つまり手前に引くのではなく押して仕事をするという実に「前向き」な道具です。いえいえ、わが鉋たちを「後ろ向き」などと思っているわけではありません。充分手入れをして適材適所に使ってこそ良い仕事が出来るというもので、バンブーロッドを作る、つまりバンブーを削るという仕事には、わが鉋は決定的に不向き−というよりも可哀想なのです。

Stanley・60−1/2

カンナの「ボディー」は鉄、鉋の台は良質の樫の木で出来ています。バンブーを、それも合金製の削り台(プレーニングフォーム)のうえで削る作業は鉋にとっては地獄の苦行のようなものです。小割を1本削り上げただけで文字通り「台なし」です。ただし、切れ味はたいへんよろしい!何といっても鉄の芸術「日本刀」の国の鋼(はがね)を使った道具です。

わたしが使っているカンナはスタンレーのBailey.No3が1台、Block Plane60-1/2が1台と9-1/2が3台です。No3は台が9+1/2インチあるスムーシング・プレーン(カンナ)です。台の長さを生かして平らな面を削り出します。主にバンブーの小割の裏側を削るのに使っています。60-1/2は歯の「仕込み」が12度の通称「ローアングル」プレーンです。このカンナが実は1番の働き者で荒削りから仕上げ削りの50%くらいまで使います。浅い仕込みを生かして、結構厚くバンブーを削って行きます。1セットのロッドを削ると20リットルのゴミ袋半分くらいが「削りかす」になりますが5割方はコイツの仕事です。

Stanley・9−1/2

9-1/2は仕上げに使います。このカンナは仕込みが20度です。なぜ3台かというとそれぞれの仕事によって歯の角度を変えて使っているからです。これがベスト!という角度が決まってないので今のところは詳しくお教え出来ませんが角度を大きくして歯持ちを良くした1台が中仕上げ、もう1台がちょっと角度を大きくした仕上げ、同様にして入念に研いで台も真っ平らにしたもう1台を「最終仕上げ」用にしています。詳しい使い方はいずれ「特集」で取り上げますのでお楽しみに。

Stanley・No3

「道具が仕事する」とは言い得て妙で、昔は「馬」に寝かせた柱に鉋を置いてお昼をしていたら、その鉋が誰の手も借りずに「すぅーっ」と滑り降りた。その鉋の孔を吹くと薄ーい削り屑が宙に舞った…というような腕前の職人さんがいたという話を聞いたことがあります。すごい話だなと思いながら、何かを作るということは道具を作り上げることなんだな、とその時は妙に納得したのを今でも覚えています。

※左下がBailey.No3、左上で使っているのは9-1/2「仕上げ用」です。右中が「働き者」の60-1/2です。

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